ゆうれのベンチで

らくふとし


 もくようがっこうわるのがいっしゅうかんもっとおそい。
 ろくかんあとながいホームルームがあって、そのあとそうをしなければならない。かつをするやつらはれんしゅうみじかくなるとっている。おれはかつはいっていないが、たくおそくなるので、きらいだ。いやだったのだが、さいきんもくようだけはすぐにたくしないので、どうでもよくなった。
 かえみちつうがくすこはずれる。そして、こうえんかう。じゅうたくすきにあるちいさなこうえんだ。だかおかにあるので、そこではまちいちぼうできる。ほそながいベンチだけがせっされている。
 おれがこうえんとうちゃくすると、せんきゃくがいた。
「よっ。」ベンチにすわっていたせんごくかるげた。
「おう。」おれもげてかえす。
 おれはせんごくとなりすわった。そのままだまって、ぼんやりとそらげた。かすれたしろかれたようなくもれが、ゆっくりとながれている。せんごくなにもしゃべらない。せんごくとおくのしきながめている。
明日あすあめかな?」おれがつぶやく。
らない。」
「だよな。」
なにかあるの?」
なにも。」
 かいれる。そのはどちらかがくちひらくこともなく、かんぎていき、ゆういろくなった。
「そろそろかえる。」せんごくがった。
「じゃあ、おれも。」おれもがる。
「じゃあな、なか。」
せんごくも、じゃあ。」
 おたがいにはんたいほうこういえがあるので、こうえんるとおれたちはわかれる。
 このようなことがはじまったのは、げつくらいまえだ。
 そのすうじつまえにあったはじめてのえいしょうテストがかえってきた。えいたんもんだいで、じってんまんてん。おれはれいてんだった。まえわすれていなかった。スペルがすべちがっていたのだ。
 さすがにんだ。テストでれいてんったのははじめてだった。すぐにこれをどうしょぶんするかかんがえた。がっこうやぶてたかったが、だれかがざんがいつけてせんせいほうこくするかもしれない。つくえおくかくしても、なにかのひょうつかるかもしれない。そもそももとからはなれていることがあんだ。いえにはかえりたくない。そうするおやつけてしまうかもしれない。
 けっきょく、うまいかんがえはかばず、おれはかばんにテストようれて、がっこうた。
 かえりたくなかったが、はなかった。おれのちゅうがっこうこうそくきびしい。こうみせはいってはならない、というそくがあった。がっこうちかくのみせもそれをっていて、せいふく姿すがたはいるとがっこうつうほうする。じつせいどうしつされるらしい。おれはぶらぶらとあるいた。
 そんなかんじでいたのが、あのこうえんだった。こうえんこうそくきんされていない。おれはそこでかんつぶすことにめた。
 しかし、すぐにせんきゃくがいることにがついた。そいつはうつむいて、めんつめている。まえがみかおにかかっていたが、それでもこのわりのようなひょうじょうをしているのはかった。おれよりもしんこくそうなようで、さすがにしんぱいになって、こえをかけた。
だいじょう、ですか?」
 あいかおげた。
なか?」
 あいはおれのまえった。せんごくだった。
 このとき、しょうじきおれはこまった。せんごくとはしたしくはなかったからだ。
 おれとせんごくおなしょうがっこうかよっていた。ろくねんせいのときにおなじクラスだった。まえじゅんならべばぜんならびで、おなじくらいのたかさなので、じゅんでもならびはわらない。それでもグループがちがったので、ほとんどはなさなかった。その、おれたちはべつちゅうがっこうしんがくすることになった。そつぎょうしきあとれんらくさきこうかんもしなかった。しょうじきかおわせるまでせんごくのことはわすれていた。
 だから、かいつづかなかった。おれはまずくったままだった。せんごくもしばらくはおれをていたが、じょじょせんはずれていった。しかたないから、おれはベンチにすわった。すると、せんごくせきすこゆずってくれた。
「ありがとう。」おれはかるあたまげた。
 それからもごんつづいた。
 なにかをはなすようなくうではなかった。せんごくさきほどのくらひょうじょうもどっている。おれもぶんのことであたまがいっぱいだった。ただかんぎて、あたりはくらくなった。
かえるわ。」おれはった。めいあんかばなかった。
「ぼくも、そうする。」せんごくこたえた。
 おれは「そっか。」とへんして、こうえんぐちわかれた。
 そのあといっしゅうかんへんかんじだった。あののことをなんおもした。なやんでいたようなせんごくそうだんるべきではなかったか。なにかしゃべって、ふんあかるくするべきではなかったか。ぶんはそっけなかったか。ぐるぐるとかんがえて、なんだかずかしくなった。
 とうとうまんができなくなって、もういちどこうえんかった。あのからいっしゅうかんもくように。
 せんごくはいた。ベンチにすわっていた。せんしゅうとはちがい、このわりのようなかおはしていなかった。それをて、おれはほっとした。
「よっ。」おれはかるあいさつをした。
「あっ。」せんごくはおれをた。
「もしかして、まいにちてる?」おれがたずねた。
「いや。いっしゅうかんぶり。」せんごくくびよこった。
「そう。」
 かいつづかなかった。
 それから、まいしゅうもくようゆうがたに、なぜかおれたちはこうえんうようになった。ベンチでぼんやりとするだけで、とくはなすこともないのに、それはつづいた。
 おれたちはともだちではないとおもう。おれはせんごくのことをなにらない。なにきで、しょうらいなにをしたいのかからない。せんごくもおれのことをらないだろう。いちどもそんなはなしをしなかった。それでも、このかんわるくなかった。わることなどかんがえられないくらいには。
 おれがこうえんくとき、かならせんごくさきにベンチにすわっていた。せんごくかよちゅうがっこうのほうがこうえんちかいからだろう。しかし、そのもくようせんごく姿すがたはなかった。おれはベンチにすわって、ぼんやりとそらた。そしてちた。せんごくなかった。
 つぎしゅうおなじだった。
 わったのだとおれはおもった。
 またもくようがやってきた。まよった。どうするかめられず、がっこうわった。こうもんたとき、ようやくけっしんして、おれはつうがくからはずれた。
 のぼざかあるいていると、くびすじあせながれた。かたむいたしがアスファルトにはんしゃして、はだく。したくうはなにつく。セミのごえこえる。あとすうじつなつやすみだ。
 おれはこうえんはいって、ベンチをた。せんごくすわっていた。そこでなぜかおれはわらってしまった。
「よっ。」
「おう。」
 おれたちはいつもどおりのあいさつをした。いつもどおりベンチにすわって、だまって、そらながめる。ちていく。
はなさなきゃいけないことが、あるんだ。」せんごくった。
「おう。」
すんだ。いえじょうきゅうに。それでしゅうかんまえからばたついてた。らいしゅうから、もうれなくなる。」
「そうか。」
「さようならだ。」
「さよならか。」
 おれたちはだまった。いつもどおりに。そして、ちた。
 おれたちはベンチからがって、こうえんぐちかった。そのままわかれる、つもりだった。
さいいていい?」おれがった。
「ここではじめてったとき、なにかんがえてた?」
 せんごくこまがおで、ほおをかいた。
じつはテストでひどいてんって、テストをどうしょぶんするかかんがえてた。」
「まじで! おれもだよ。えいたんのだけど。」
「そうなの! おなじだよ。」
 ぐうぜんがおれたちのはらをくすぐった。わらごえかげしずじゅうたくひびいた。
なんてんだった? おれはれいてんじってんまんてんで。」
った。いってんしのときにおやつかっちゃったけど。」
「おれはばれてない。かばんのなかにあるぜ。」おれはかばんをたたいた。
「それぜったいつかるなよ。」
「もちろん。」
 そして、おれたちはわかれた。
 かえみちれんらくさきかなかったことにづいた。でも、それでよかった。おれたちにそういうのはひつようない。それから、おれはさいせんごくかおおもした。あんなにちよくわらえるやつだとは、らなかった。

らくふとし

2026ねんだいかいあおいスピン」さくひんしゅう にゅうせん

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