小こ鳥とりのさえずり

グレゴリー・ケズナジャット

 音おとがした。キーンと、まるで自じ転てん車しゃのブレーキを急きゅうにかけたようなきしんだ音おとだった。朱じゅ里りは寝しん室しつの窓まどに駆かけていった。事じ故こでもあったのか、と思おもい、外そとをのぞいた。しかし見みてみると自じ転てん車しゃも人ひとも見み当あたらない。
 朱じゅ里りとお母かあさんが新あたらしいマンションに引ひっ越こしてきて、まだ一いっ週しゅう間かんしかたっていない。部へ屋やはマンションの一いっ階かいにあって、裏うらには小ちいさな庭にわがある。今いまはまだ手て入いれされていない芝生しばふしかないけれど、隣となりの部へ屋やの庭にわにはいろんなものがある。丸まるいテーブルと折おりたたみ式しきの椅い子す。古ふるそうな物もの干ほしロープ。そして軒のき先さきから、小ちいさな皿さらのようなものがぶら下さがっている。
 キーン。
 あそこだ。皿さらの端はしっこに小こ鳥とりが止とまっている。顔かおと翼つばさが黒くろく、胸むねは鮮あざやかなオレンジ色いろだ。せわしく頭あたまを左さ右ゆうに回まわし、辺あたりを確かく認にんしてから、また小ちいさな体からだにしては意い外がいと大おおきな鳴なき声ごえを放はなち、皿さらから何なにかをついばんだ。
「君きみは何なにをしゃべっているの?」と朱じゅ里りはぼんやりと問といかけた。
 前まえに住すんでいた部へ屋やには、鳥とりは来こなかった。高こう層そうマンションの十じゅう五ご階かいで殺さっ風ぷう景けいなベランダしかなく、そもそも東とう京きょうの真まん中なかだったから辺あたりでは鳥とりを見みかけなかったのかもしれない。燃もえるごみを出だす日ひにマンションの前まえに集あつまってくるカラスがせいぜいだった。一いち度ど、夕ゆう方がたに川かわ縁ぶちを歩あるいていたらカモメの声こえが聞きこえた気きがしたけれど、海うみから迷まよい込こんできたのかもしれない。
 でもこの辺あたりには森もりがたくさんあるから、きっと動どう物ぶつもいろいろいるだろう。ほかにどのような鳥とりが見みえるのか。
「朱じゅ里り、何なにしてるの?」
 お母かあさんのアシュリーが部へ屋やに入はいってきた。いつものように英えい語ごで話はなしかけてきて、朱じゅ里りも同おなじく英えい語ごで答こたえた。
「鳥とりを見みてるの。」
 お母かあさんは窓まどに近ちか寄よってきた。
「あ、ほんとだ。かわいい小こ鳥とりがいるのね。新あたらしいご近きん所じょさん。さあ、早はやく準じゅん備びして。」
 この部へ屋やに引ひっ越こしてきた当とう日じつから、お母かあさんは、隣りん人じんへのご挨あい拶さつをしないと、と繰くり返かえし言いっている。本ほん当とうは初しょ日にちにするつもりだったが、どのような日に本ほん語ごを使つかえばいいか、確かく認にんしようとスマートフォンで検けん索さくすると、挨あい拶さつの際さいに手て土産みやげを渡わたす習しゅう慣かんがあることを知しり、やめた。まずはちゃんと手て土産みやげを買かっておこう、と。
「引ひっ越こしの挨あい拶さつは古ふるい文ぶん化かじゃない?」と朱じゅ里りはそのときに言いった。「最さい近きんはやらない人ひとが多おおいらしいよ。」
「お母かあさんは古ふるい人にん間げんだから、やりたいの。」
「お母かあさんの国くにではそんな習しゅう慣かんはないでしょ?」
「でもこの国くにではするでしょ? これからここは私わたしたちのホームだから、お隣となりさんと仲なか良よくしないと。」
 お母かあさんはカナダで生うまれて、大だい学がくを卒そつ業ぎょうしてから日に本ほんに渡わたってきた。朱じゅ里りは二に回かいしかカナダを訪おとずれたことがないけれど、お母かあさんのおかげでその国くにの文ぶん化かと言こと葉ばについて詳くわしかった。日に本ほん人じんのお父とうさんを持もち、カナダ人じんのお母かあさんを持もつ朱じゅ里りには、そのどちらの国くにも故こ郷きょうと感かんじてほしい。それはお母かあさんの考かんがえだったみたいだ。
 お父とうさんがまだいた頃ころ、朱じゅ里りの両りょう親しんはそれぞれの文ぶん化かを教おしえる作さ業ぎょうを分ぶん担たんしていた。家いえの中なかでお父とうさんと日に本ほん語ごを話はなして、お母かあさんとは英えい語ごを話はなした。クリスマスにお母かあさんといっしょにクリスマスツリーを飾かざり、初はつ詣もうでのときにはお父とうさんといっしょにさい銭せん箱ばこの前まえで手てを合あわせた。二人ふたりは違ちがう背はい景けい、違ちがう言こと葉ば、違ちがう伝でん統とうを持もっていた。でも朱じゅ里りにとっては、その全すべてが自じ分ぶんの家か庭ていの中なかの文ぶん化かだった。
 お父とうさんがいなくなった後あと、お母かあさんの仕し事ごとは倍ばいになった。朱じゅ里りの英えい語ご教きょう育いくを怠おこたらず、この国くにの文ぶん化かと習しゅう慣かんを朱じゅ里りに教おしえるようにも努ど力りょくした。近きん所じょへの挨あい拶さつにこれほどこだわっているのも、そのためなのではないかと朱じゅ里りは思おもった。大人おとなのマナーの見み本ほんを娘むすめに示しめしたかったのだろう。
 インターネットで読よんだ情じょう報ほうに従したがって、お母かあさんは手て土産みやげのハンドタオルと洗せん剤ざいを用よう意いした。それから近ちかくの百ひゃく円えんショップで手て提さげ袋ぶくろとメッセージカードを買かってきた。昨さく夜や、お母かあさんは食しょく卓たくに座すわって、一いち枚まい一いち枚まいに短みじかいメッセージを注ちゅう意い深ぶかく書かいていた。
「挨あい拶さつをするならメッセージカードは要いらなくない?」
「不ふ在ざいかもしれないよ。それとも忙いそがしくて出でてきてくれないかもしれない。そうなったらこの袋ふくろを置おいて帰かえってくる。」
 お母かあさんの肩かた越ごしに、朱じゅ里りはメッセージカードの文ぶん章しょうを眺ながめていた。お母かあさんの字じは独どく特とくで、朱じゅ里りが書かくのとは明あきらかに違ちがう。朱じゅ里りは別べつに字じが上手じょうずというわけではなかったけれど、上手じょうずとか下へ手たとか、そんな問もん題だいではなかった。朱じゅ里りが書かく字じは、小ちいさい頃ころから練れん習しゅうをさせられた人ひとのものだった。大人おとなになってから日に本ほん語ごを覚おぼえたお母かあさんの文も字じは、どことなく雰ふん囲い気きが違ちがう。
「私わたしが書かけばよかったのに。」
「これはお母かあさんの仕し事ごとでしょ? 子こどもにお願ねがいするわけにはいかない。」
「でも......。」
 小ちいさいとき、お母かあさんの日に本ほん語ごを何なんとも思おもわなかった。発はつ音おんがお父とうさんやそのほかの周まわりにいる大人おとなとはちょっと違ちがうし、ときには間ま違ちがったことを言いったが、ずっとその言こと葉ばを聞きいてきた朱じゅ里りにとっては、それはお母かあさんの言こと葉ばであって、お母かあさんと同おなじようにいとおしかった。
 でもある日ひ、お母かあさんは学がっ校こうの参さん観かん日びに来きた。人ひと懐なつっこく、いつも積せっ極きょく的てきに人ひとに話はなしかけるお母かあさんは同どう級きゅう生せいのお父とうさんとお母かあさんや、先せん生せいと楽たのしそうに話はなしていたが、みんなの親おやたちが帰かえった後あと、同どう級きゅう生せいの男だん子しが、お母かあさんのしゃべり方かたを大おおげさにまねして、彼かれの友とも達だちを笑わらわせた。それを聞きいた朱じゅ里りはつらかった。お母かあさんを守まもりたかった。お母かあさんは日に本ほん語ごだけではなく英えい語ごもできるよ、英えい語ごどころか国こく語ごでも良よい点てん数すうが取とれない子こが何なんでおもしろがってるの? 心こころの中なかで朱じゅ里りはそうつぶやいたが、何なにも言いわなかった。言いう勇ゆう気きはなかった。
 以い来らい、朱じゅ里りはある不ふ安あんを追おい払はらうことができなかった。お母かあさんの言こと葉ばは、ほかの人ひとにも笑わらわれているのか。そう思おもうといたたまれなかった。自じ分ぶんの独どく特とくな言こと葉ばを気きにせず、常つねに人ひとと会かい話わしたがるお母かあさんのことが急きゅうに恥はずかしくなった。静しずかにすれば笑わらわれる心しん配ぱいはないのに。
 お母かあさんといっしょにマンションの部へ屋やを回まわって、知しらない人ひと一人ひとり一人ひとりと日に本ほん語ごで話はなしているところを隣となりで聞きくことを想そう像ぞうすると、胃いが少すこし痛いたくなった。
「さあ、行いこう。」
 朱じゅ里りは諦あきらめて、不ふ安あんを顔かおに出ださないように注ちゅう意いしつつ、立たち上あがった。二人ふたりは玄げん関かんで靴くつを履はいて部へ屋やのドアを出でた。
「本ほん当とうは左ひだりと右みぎの部へ屋や、そして上うえと下したの部へ屋やに行いくのが普ふ通つうだけど、私わたしたちは一いっ階かいだから三さん部へ屋やだけだね。」
「ラッキーだね。」
「まずは上うえの階かいに行いこうか。」
 マンションは大おおきくなかった。三さん階がい建だてで、各かく階かいに五ご部へ屋やがまっすぐ並ならんでいる。お母かあさんの後あとをついて二に階かいの通つう路ろに続つづく外そと階かい段だんを上のぼった。程ほどなく自じ分ぶんたちの部へ屋やの上うえの部へ屋やのドアにたどり着つき、お母かあさんはチャイムを押おした。ピーンポーン、という音おとがドア越ごしに聞きこえたが、その後あとはしんとしていた。
 誰だれも出でてこない。
「いないかな。」と朱じゅ里りは言いってみた。
「そうみたいだね。」お母かあさんは残ざん念ねんそうに言いった。ドアの取とっ手てに一ひとつの手て提さげ袋ぶくろを丁てい寧ねいにかけた。「やっぱりメッセージカードを用よう意いしておいてよかったね。一いっ階かいに戻もどろっか。」
 また階かい段だんを下おりて、自じ分ぶんたちの部へ屋やの右みぎ側がわにあるドアの前まえに止とまった。お母かあさんは同おなじくチャイムを鳴ならした。ピーンポーン。しーん。前まえと同おなじように、応おう答とうがない。
「みんな、出でかけてるかしら。」お母かあさんはまた手て提さげ袋ぶくろを取とっ手てにかけながらそう言いった。「もうちょっと遅おそい時じ間かんにすればよかったかも。」
 朱じゅ里りはうなずいたが、内ない心しん、喜よろこんでいた。三さん部へ屋やのうち二ふた部へ屋やは不ふ在ざい。あと一ひと部へ屋やだけだ。今いままでの幸こう運うんがこのまま続つづけば、挨あい拶さつのやりとりを聞きかずに済すむかもしれない。
 自じ分ぶんたちの部へ屋やの前まえを通とおって、左ひだり側がわのドアの前まえに来きた。お母かあさんはチャイムを鳴ならした。ピーンポーン。今こん度ども誰だれも出でてこないように、と朱じゅ里りは頭あたまの中なかで願ねがった。お母かあさんはため息いきをつき、手て提さげ袋ぶくろを取とっ手てにかけ始はじめた。
 するとドアが開ひらいた。部へ屋やの中なかから、男だん性せいの顔かおが突つき出でた。
「はい?」
 六ろく十じゅう代だいか、それとももっと年とし上うえか。年ねん齢れいは朱じゅ里りには分わからないけれど、お母かあさんより年とし上うえなのは確たしかだ。髪かみの毛けは白しろくなっていて、目めもとに細こまかいしわがたくさんあった。お母かあさんの顔かおと朱じゅ里りの顔かおを交こう互ごに見みていて、少すこし慌あわてているような様よう子すだった。
 お母かあさんは日に本ほん語ごに切きり替かえて、話はなし始はじめた。
「初はじめまして。このたびは、あの、隣となりの一〇三号ごう室しつに入にゅう居きょしました、あの、サンダーズと申もうします。これからご迷めい惑わくをかけることがあるかもしれませんが、あっ、どうぞよろしくお願ねがいいたします。」
 不ふ在ざいと思おもっていた住じゅう人にんが急きゅうに現あらわれて驚おどろいたのか、それともインターネットで読よんだ例れい文ぶんを必ひっ死しに思おもい出だそうとしていたのか、お母かあさんの日に本ほん語ごはいつもより少すこしぎこちない。朱じゅ里りは思おもわず顔かおをしかめた。
 でも男おとこはそんなことを気きにしていない様よう子すだった。むしろお母かあさんの言こと葉ばを聞きいて、緊きん張ちょうが和やわらいだようで、ほほ笑えんだ。男おとこが笑わらうと、目めもとのしわがさらに増ふえて、いっそう深ふかくなった。
「ああ、そうですか。山やま口ぐちです。こちらこそよろしくお願ねがいします。」
 お母かあさんは練れん習しゅうした言こと葉ばを言いい続つづけ、手て提さげ袋ぶくろを両りょう手てで渡わたした。
「つまらないものですが、よろしければ。」
 山やま口ぐちさんはお母かあさんの袋ふくろを受うけ取とった。
「どうも。」
 山やま口ぐちさんは手てに持もっていた袋ふくろを眺ながめていた。早はやく話はなしを終おわらせて部へ屋やに戻もどろう、と朱じゅ里りは願ねがっていたけれど、そこで山やま口ぐちさんは予よ想そう外がいなことを言いいだした。
「よかったらお茶ちゃでも。」
 さすがにお母かあさんも遠えん慮りょした。
「いえいえ。」
「どうぞ上あがってください。」あたかもお母かあさんの言こと葉ばが聞きこえなかったかのように、山やま口ぐちさんはドアを開あけたまま部へ屋やの中なかへ戻もどっていった。
 朱じゅ里りはお母かあさんの顔かおを見みて、帰かえろう、と声こえを出ださずに口くちを動うごかしたけれど、お母かあさんはそれを無む視しして、靴くつを脱ぬぎ始はじめた。しかたがなかった。朱じゅ里りはお母かあさんの後あとをついて部へ屋やに入はいった。
 山やま口ぐちさんの部へ屋やは朱じゅ里りたちが住すんでいた部へ屋やと全まったく同おなじ間ま取どりだった。でも彼かれが長なが年ねんここに住すんでいることが、室しつ内ないを見みると分わかる。全すべての壁かべにアートや写しゃ真しんが飾かざってある。リビングに本ほん棚だなが四よん台だいもあって、どれからも本ほんがあふれていた。
 山やま口ぐちさんがキッチンからお茶ちゃを持もってきた。朱じゅ里りとお母かあさんはゆったりとしたソファに座すわり、山やま口ぐちさんは隣となりの椅い子すに座すわった。
「どちらから引ひっ越こしてきたんですか。」
「東とう京きょうです。」とお母かあさんは返へん事じした。
「はあ。」と山やま口ぐちさんは頭あたまを上じょう下げに動うごかした。「東とう京きょうねえ。ここはずいぶん違ちがう雰ふん囲い気きでしょう。」
「ええ。」お母かあさんははにかんだ笑え顔がおを見みせた。英えい語ごで話はなすときは強つよく見みえるのに、日に本ほん語ごとなると、急きゅうにおとなしくなった。英えい語ごで話はなすときと日に本ほん語ごで話はなすときを両りょう方ほう見みている朱じゅ里りにとっては、そのギャップがいつも不ふ思し議ぎに感かんじられた。でも考かんがえてみると、そんなところは山やま口ぐちさんには分わからないだろう。
 また沈ちん黙もくが訪おとずれた。お母かあさんは今いま言こと葉ばに困こまっているのか、話はなしの続つづけ方かたを考かんがえているのか、朱じゅ里りは心しん配ぱいした。
 お母かあさんはいきなり何なにかを思おもいついたような顔かおつきになった。
「あ、バードフィーダー。」
「え?」山やま口ぐちさんは驚おどろいた表ひょう情じょうだった。
 お母かあさんは右みぎ腕うでを上あげて、部へ屋やの奥おくの引ひき戸ど越ごしに見みえる裏うら庭にわを指ゆび差さした。
「バードフィーダーを出だしているのは山やま口ぐちさんですね。実じつは私わたしと娘むすめは、見みていました。」
「ああ。」山やま口ぐちさんは安あん心しんしたように、静しずかに笑わらった。「あれか。この辺あたりは鳥とりが多おおくてね、なかなかおもしろい。この時じ期きはジョウビタキが来きてる。」
「ジョウビタキ?」お母かあさんはその言こと葉ばの意い味みが分わからなかった。朱じゅ里りも初はつ耳みみだった。
「あそこに小こ鳥とりがいるでしょ? あれはジョウビタキというんだ。渡わたり鳥どりでね、毎まい年とし冬ふゆになるとロシアや中ちゅう国ごくから日に本ほんにやってくる。」
「すごいですね。」お母かあさんは本ほん当とうに感かん心しんしたようだった。「あんなに小ちいさいのに。」
「ええ。小こ鳥とりにしてはとんでもない距きょ離りでしょ。でも毎まい年とし、必かならずやってくる。」
 あたかも自じ分ぶんが話わ題だいになっていることに気きがついたかのように、ジョウビタキは鳴ないた。キーン。山やま口ぐちさんとお母かあさんは静しずかに笑わらった。そして朱じゅ里りもほほ笑えんだ。いつのまにか緊きん張ちょうが少すこし解とけていた。
 不ふ思し議ぎなことだった。挨あい拶さつしにいこう、とお母かあさんに言いわれたとき、朱じゅ里りは部へ屋やから出でたくなかった。窓まど越ごしに鳥とりを見み続つづけたかった。人ひとと話はなす、ましてや人ひとの部へ屋やに入はいり込こむなんて、考かんがえるだけで緊きん張ちょうする。言こと葉ばがときどきままならないお母かあさんだって、きっと緊きん張ちょうしたにちがいない。ひょっとすると朱じゅ里りよりも緊きん張ちょうしていたのかもしれない。
 山やま口ぐちさんとお母かあさんの会かい話わが軌き道どうに乗のったらしく、二人ふたりは楽たのしそうに話はなしていた。朱じゅ里りは楽らくになって二人ふたりの声こえを聞きいていた。でも彼かの女じょはときどき、庭にわで鳴なき続つづけるジョウビタキに目めをやった。小こ鳥とりなのに、長なが旅たびをする。小こ鳥とりなのに、声こえが大おおきい。大たい陸りくにいたときも、同おなじような鳴なき声ごえをしていたのだろうか。それともこうしてこの列れっ島とうに渡わたり、ここにいるよ、とどうしても伝つたえたかったのだろうか。

グレゴリー・ケズナジャット

作さっ家か。著ちょ書しょに「開かい墾こん地ち」「トラジェクトリー」「言こと葉ばのトランジット」などがある。

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